夏休みを利用して海外に渡航される方も多いことと思われますが、一般に海外の治安は日本と比較して必ずしも良いとは言えず、また気のゆるみからも、何らかのトラブルに巻き込まれる可能性は排除できません。海外旅行の際には、法制度、文化、風俗・習慣等のすべてが日本とは異なることを強く認識して、トラブルに巻き込まれないよう十分注意し、楽しい旅行にすることが大切です。
海外滞在中、できるだけ安全かつ快適にお過ごしいただくため、また、不測の事態に巻き込まれることなく無事に帰国いただくための主な注意事項を以下のとおりお知らせいたします。この夏、海外に渡航・滞在を予定される方は、旅行計画の段階から、現地の治安関連情報の入手・理解を心がけてください。また、旅行中、万一事件・事故等に遭遇した場合には、現地警察等の指示どおりに行動するほか、最寄りの日本国大使館・総領事館等にも報告するようにしてください。更に、旅行中の日程・連絡先は必ず本邦の家族等に残しておくとともに、旅行の間も家族等との連絡を絶やさないでおくようにしてください。
《 ※各国の詳しい渡航情報については、海外安全ホームページを御参照ください。 》
1.各種犯罪被害について
いずれの国や地域においても多種多様な犯罪が発生し、また多くの旅行者が被害に遭っています。海外滞在中は、どの国や地域を訪問しても何らかの犯罪に巻き込まれるおそれがあることを常に念頭に置いて、慎重に行動するようにしてください。
基本的な心構え(対策)は次のとおりです。
○多額の現金や多くの貴重品を持ち歩かない。
○空港や市内両替所で多額の両替・換金をしない。
○目立たない行動や服装を心がける。
○夜間あるいは人通りの少ない場所の一人歩きは絶対に避ける。
○タクシーを利用する際は、いわゆる「白タク(先方から声をかけてきて客を乗せ込む性質のもの)」は絶対に利用せず、たとえば最寄りの大きなホテルまで行って乗る等の工夫を心がける。
○見知らぬ人から日本語や片言の英語等で親しそうに話しかけられた場合、誘いに乗って一緒に行動すると、睡眠薬強盗(睡眠薬を入れた飲食物を勧め、意識を失っている間に所持品を奪おうとするもの)やいかさま賭博、あるいは「ぼったくり」等の被害に遭う可能性が高いので、絶対についていかないようにする。(可能であれば最初から取り合わないように心がける。)
○生命と身体の安全を最優先する。強盗に遭っても、相手が武器を持っていることを想定し絶対に抵抗しない。
○現地の風俗・習慣に配慮する。日本人同士で集団で騒ぐ等、現地の人々の感情を刺激するような行為は慎む。
2.麻薬等違法薬物犯罪に関する注意
多くの国や地域では、麻薬等違法薬物犯罪に関する取り締まりが強化されています。罰則等も非常に厳しく、場合によっては外国人にも例外なく死刑や終身刑等の重刑が科されます。「旅行者だから少しぐらい・・・」といった甘い考えは絶対に通用しません。違法薬物には絶対に興味を示さないようにすることはもちろん、繁華街の路地裏など麻薬・薬物犯罪の温床となるような場所には近づかない、不審なもの(タバコ、高級茶葉と称される例が多い)を購入しない、そして、見知らぬ人物から物品の購入や運搬を依頼されても決して応じないことが肝要です。なお、自分では気付かないうちに「運び屋」として利用される可能性もあるので、出国の際、見知らぬ人物又は知り合ったばかりの人物から、「△△氏へのおみやげを持って行って欲しい。」などの依頼を受けた場合は、毅然とした態度をもって断りましょう。また、知らない間に手荷物に薬物等を入れられてしまうこともあるので、空港等においては手荷物から目を離さず、管理を徹底してください。
3.デモ・集会等に関する注意
世界各地で多種多様かつ大規模なデモ・集会の開催が目立っています。デモ・集会は、その性質によっては暴動や治安部隊との衝突に発展することもあるなど、状況に応じ大きな危険が伴う動きのひとつです。治安が安定しているように見える国・地域・都市・町でも、国際・国内情勢の推移によっては、いつ、どこでこのような事態が発生するかわかりません。海外滞在中は、このような可能性もあることを念頭に置き、現地の治安情勢に気を配りつつ、以下の諸点にも留意の上、安全確保に注意を払うよう心がけてください。
○外出する際には周囲の状況に格別の注意を払い、大勢の人が集まって、デモ・集会等の動きを見せているときは絶対に近づかないようにする。(写真・ビデオ撮影等は厳禁。)
○公衆の場での言動や態度に注意する。群衆を刺激するような行為は慎む。
○現地報道等をこまめにチェックする。
4.自然災害に対する心構え
国や地域それぞれに、地震・津波をはじめ、火山、台風(暴風雨)あるいは竜巻、洪水等、現地特有の自然災害に見舞われることがあります。滞在する場所によっては、旅行者が突然このような災害に巻き込まれたり、また移動途中に思いがけず被災箇所へ踏み込んでしまったりする可能性もありますので注意と警戒は不可欠です。
もちろん、予測不能な災害もありますが、以下の点に留意して、災害や事故に巻き込まれないよう行動予定を慎重に検討してください。
○日頃から現地の情報や交通情報の収集に努め、予報や警報に留意する。
○渡航予定地の災害パターンや、状況に応じては日程・移動手段・訪問地を変更する、あるいは不要不急の移動や渡航を控える。
○万一滞在中の場所が災害に巻き込まれるような状況に遭遇した場合は、迅速に、日本の家族等関係者及び最寄りの日本国大使館又は総領事館に連絡をとり、安否状況を報告する。
5.交通事故について
海外は日本とは交通規則が異なる上、多くの国や地域では交通マナーも徹底されていないことから、交通事故に巻き込まれる旅行者が絶えない実情があります。道路の横断方法など、日本の常識がまったく通用しない国や地域もあります。そんな状況を見て、「郷に入っては郷に従えでよいのではないか」と、そんな錯覚に陥りがちですが、これは大きな間違いです。ルールやマナーが徹底されていない海外にいてこそ、日本人として自ら模範を示す自覚がほしいものです。なお、基本的なことですが、散策中などは左右前後をよく確認し、気を配り、普段以上に安全確保に留意してください。
また、レンタカーやレンタル・バイクの利用を予定される場合は、「現地のルールは実践で学ぶ」のではなく、くれぐれも現地のルールやマナーを十分学び、かつ安全運転が可能か否かを踏まえて、利用の是非を検討してください。
6.旅券(パスポート)の管理及び携行義務について
(1)最近、世界各地で日本人の旅券(パスポート)の紛失・盗難事案が多発しています。紛失や盗難を防ぐためにも、①パスポート等貴重品の入ったバッグは身体から離さない、②バスや地下鉄の車内ではリュック等は身体の前で抱える、③人混みの中では荷物から目を離さないようにするといった行動を心がけてください。
(2)万一パスポートを紛失したり、盗難に遭ったりした場合は、直ちに現地の警察に赴き、紛失届あるいは被害届を提出し、いずれかの写し又は紛失・被害証明を入手するとともに、日本国大使館又は総領事館の領事窓口までご連絡・ご相談ください。
なお、日本国大使館や総領事館において新たなパスポートや「帰国のための渡航書」の発給を受けた場合、国や地域によっては、その後、改めて出入国管理局等で出国のための確認手続きが必要となり、この一連の手続きが終了するまで相応の時間がかかることがあります。このように、パスポートを紛失したり、盗難に遭ったりすると、その後の手続きが大変煩雑であり、かつ時間を要します。
パスポートは、海外において自らの身元を証明する重要なものであるのみならず、紛失したり盗難に遭ったりすると、たとえば改ざんされて密出入国などに悪用されたり、他の犯罪を引き起こすような問題ともなります。管理は慎重に、かつ徹底して行ってください。
(3)多くの国や地域では、外国人はパスポートを常時携行することが法律で義務付けられています。したがいまして、警察官に職務質問を受け、また提示を求められた場合にはこれに応じなければなりません。違反すると罰金等を科されることもありますので、パスポートの常時携行が義務づけられている国・地域では、紛失したり盗難に遭ったりしないよう十分注意し、管理を徹底しつつ携行するようにしてください。
7.旅行制限区域及び写真・ビデオ撮影の制限等について
多くの国や地域では、政府関係施設や軍事施設及び軍事関連施設、あるいは宗教施設等の立入りが厳しく制限されています。慎重に行動してください。
また、これら施設や設備がある場所の周辺では写真・ビデオ撮影が禁止されている場合が多く、現地法令に基づき、逮捕・拘束、カメラ等所持品の没収がなされるおそれがあるため、最大限の注意が必要です。宗教上の理由から女性の撮影が禁忌とされていたり、政治上の理由により街頭デモのような政治活動の撮影が禁じられていたりする国や地域もあります。なお、一部の博物館、美術館等では写真撮影等が禁じられているところもあります。日本にいるのと同じ感覚で行動することは厳に慎み、たとえば撮影の前には、必ず周囲の係員や現地の人々等に制限の有無等について確認を求めるようにしてください。
8.健康管理について
快適な旅行を続けるためには、健康管理は最大の課題です。各種感染症対策については、別途「広域情報」が発出されていますし、各国・地域別の「安全対策基礎データ」の中にも健康管理についての注意事項が掲載されていますので、これらを参考にして健康管理に注意を払ってください。
なお、熱帯地方に渡航・滞在を予定する方はもとより、この時期、北半球を中心とする地域への渡航・滞在を予定される方は、特に「熱中症」対策が不可欠です。次の注意事項を踏まえ、体調維持に努めてください。
○水分、ミネラルを十分に補給する(但し、つめたすぎるものや糖分の多いもの、アルコール類は飲まない)。
○トレッキング・登山等を計画する場合はペース配分を考え、直射日光の下、長時間歩くことは避ける。動悸がしたり、気分が悪くなったり、めまい、脱力感等の症状があればすぐに涼しい所で休息をとる。特に標高2,000mを越えるような高山・高地での活動の際には高山病にかからないよう気をつける。
○直射日光を避け、皮膚や健康を害することに注意する。色の薄い、ゆったりとした服を着て、つばの広い帽子を被り、サングラス、日焼け止めクリームを使用する。
○持病(特に心臓病、高血圧)や循環器系の病気のある旅行者は、高温の環境下では急性の発作を引き起こしやすいので、暑い時間帯の行動を避ける。常用薬を携行し、また単独で散策しないよう注意する。
○冷房の効いた屋内と屋外との温度差は激しいので、特に高齢者や子供は衣服で温度を調整する。
9.海外旅行保険
国や地域によっては、突然事故に遭い、また病気や怪我をして病院に搬送されても、実費あるいは保険等による治療費の負担が保証されないと、診察や治療が受けられない(断られる)ことがあります。また医療水準や衛生事情により、その国では必要な治療が受けられず、他国や日本への緊急移送が必要となる場合もあります。当然のことながら保険に入っていないと、時には数千万円にものぼる高額な医療費・移送費を全て自己負担しなければなりませんので、万一に備え、十分な補償内容の海外旅行保険に加入しておかれることをお勧めします。
10.テロ・誘拐対策について
テロや誘拐対策に関しては、以下を御参照いただき、不測の事態に巻き込まれないよう十分注意を払ってください。
(1)2011年6月9日付け広域情報「テロ事件に関する注意喚起」
(2)2011年6月9日付け広域情報「誘拐事件に関する注意喚起」
(3)パンフレット「海外旅行のテロ・誘拐対策 Q&A」(URL : http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_10.html)
(4)パンフレット「海外へ進出する日本人・企業のための爆弾テロ対策Q&A」
(URL : http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_03.html)
(問い合わせ先)
○外務省領事局海外邦人安全課(各種感染症及びテロ・誘拐に関する問い合わせを除く)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5139
○外務省領事局政策課(各種感染症に関する問い合わせ)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2850
○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐に関する問い合わせ)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3048
○外務省領事サービスセンター(海外安全担当)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(外務省代表)03-3580-3311(内線)2902
○外務省海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp
http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp (携帯版)