2011年11月2日水曜日

Eid-ul Azha 期間中のクリミア・コンゴ出血熱への注意について

1.10月25日付報道によれば、イスラマバード市内の医療機関PIMSにおいて、ハイバル・パフトゥンハー州ハリプールの患者がクリミア・コンゴ出血熱に感染し死亡した旨報じられています。
 また、別の報道では、本年9月にクエッタの病院においても、アフガニスタンから搬送された患者を治療した外科医らが、クリミア・コンゴ出血熱に感染した旨報じられています。

2.クリミア・コンゴ出血熱は、ウイルス性の出血熱で、自然界ではウシ、ヒツジ、ヤギなどで感染サイクルが形成されており、マダニがこれらを刺すことにより伝搬していきます。これらの動物では感染しても症状はでませんが、ウイルスを持ったマダニにヒトが刺された場合、2~9日間の潜伏期間ののち、突然の高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐がみられ、重症化すると全身の出血(鼻出血、気道出血、口腔出血、消化管出血、皮下出血など)をきたすことがあります。ただし、ウイルスに感染しても発症率は20%程度と推定されており、さらに死亡率は15~40%(より高いとする報道もあります)とされています。

 感染経路は以下のとおりです。(空気感染は否定されています)

(1) ウイルスを持ったマダニに刺されたり、これをつぶしたりする。
(2) 感染した動物の血液や組織と接触して感染する。
(3) 感染者の血液や血液を混ずる体液や排泄物に接触する。

 つまり、流行地の羊飼い、野営者、農業従事者、獣医師等、家畜およびダニと接触する人や、医療従事者が感染リスクが高いと考えられます。保健当局は、対策として家畜にワクチンを接種したり、ダニを殺す殺虫剤を家畜に使ったりしていますが、すべての家畜に対策が行われているわけではありません。

3.クリミア・コンゴ出血熱は、南アジア、中央アジア、中近東、アフリカに広く分布しており、パキスタンでは1976年以来、約300例が報告されています。パキスタン国内では、毎年、FATA、ハイバル・パフトゥンハー州、シンド州などで報告が確認されており、2000年以降は報告数が急増し、牧畜業者や精肉業者、医療従事者を中心に年間50-60例が報告されています。ラワルピンディでは、昨年9月にホリー・ファミリー病院でクリミア・コンゴ出血熱に感染した牧畜業の患者の治療にあたった9人の医療従事者が、クリミア・コンゴ出血熱に感染した旨報じられています。

4.都市部における日常生活では感染リスクはほとんどないと考えられますが、11月7日、8日のEid-ul Azha(犠牲祭)期間中には、多くの家畜が都市部に持ち込まれ屠殺が行われるため、クリミア・コンゴ出血熱への感染リスクが高まるものと懸念され、当地当局も注意を呼び掛けています。
 つきましては、在留邦人の皆様におかれましては、以下の諸点につき十分注意してください。
 なお、万が一、上記2.のような症状があり、感染が疑われるような場合には、お早めに信頼のおける医療機関、もしくは当館医務官等にご相談いただくようお願いいたします。

(1)家畜や牧畜業者との接触、農場や牧場でのキャンプやピクニックを避ける。
(2)鼻血が止まらないなど、出血傾向と考えられる症状のある人には近づかない。
(3)医療機関へ行く場合には、なるべく他の患者や入院病棟、血液の付着している可能性
のある廃棄物などには近づかない。
(4)野生動物にはむやみに手を出さない。

 特に、Eid-ul Azha期間中には、

(1) 家畜屠殺には立ち会わない。立ち会わざるを得ない場合には、虫よけ対策をとり家畜に付着しているダニには決して触れたり、つぶしたりしない。
(2) 自分では家畜の屠殺・解体はしない。やむなく自身で屠殺・解体する場合にはゴム手袋にゴーグルをし、家畜の血液や体液が体に付着しないようにする。屠殺・解体を見学する場合にも家畜の血液や体液が付着しないように十分な距離をとる。屠殺の終わった後も、屠殺の行われた場所には近づかない。
(3) 屠殺された新鮮な家畜の肉には感染性があるため、触れないようにする。やむなくこれを調理する場合には、ゴム手袋をするなど生肉に直接触れないように心がけ、火を通して調理する(ウイルスは屠殺後数時間で失活し感染性を失いますので、衛生的な精肉店の店頭の肉は安全と考えられます)。
(4) 生乳は飲まない。