2012年5月2日水曜日

パキスタン治安情勢に関する注意喚起

1 4月29日、タリバーンに誘拐されていた赤十字国際委員会(ICRC)の英国人職員が、バロチスタン州クエッタ郊外の果樹園で遺体となって発見されました。2002年のダニエル・パール記者誘拐殺人事件や2009年のポーランド人地質学者誘拐殺人事件に続く誘拐犠牲者で、現在、昨年8月にパンジャブ州ラホールで誘拐された米国人や、本年1月にパンジャブ州ムルタンで誘拐された外国人援助関係者は、未だ解放されておりません。



2 本日5月2日は、国際テロ組織アルカイダ指導者のウサマ・ビン・ラーディンが米当局の作戦により殺害されて1年目の節目に当たる日です。また、4月27日付「大使館からのお知らせ」でお伝えしたとおり、当地米国大使館は米国市民に対し、当面の間、国内における移動につき注意を呼び掛けるとともに、同大使館職員に対しては、4月27日から5月5日までの間、イスラマバード市内のレストランやマーケットの利用を制限、米国市民に対しても同様の予防策をとるよう注意喚起しています。



3 ウサマ・ビン・ラーディン殺害後、同事件に対する報復テロ事件、または、その余波と思われるテロ事件が国内各地で発生しましたが、パキスタン・タリバーン運動(TTP)はその関与したテロ事件において、過去に「北大西洋条約機構(NATO)の全加盟国の外交官が標的だ。我々は更なる襲撃を続ける。パキスタンが第一の標的で、米国が第二である」旨の犯行声明を出しております。



4 そこで今一度、下記のとおり、誘拐及びテロ防止対策について注意喚起させていただくとともに、在留邦人の皆様におかれましては、本お知らせを熟読の上、御家族共々、常日頃から安全対策・危険回避に万全を期してください。







● 誘拐防止対策



1 はじめに

(1) 誘拐対策は、犯人との知恵比べである。どちらの備えが勝っているかで勝負がつく。

(2) その場に直面しても、沈着冷静を心掛け、決してヒーローになろうと思わぬことである。

(3) ①目立たない、②用心を怠らない、③行動を予知されない、という3原則を守る。

  

2 車の運転時におけるポイント

~外出時が一番危険です。原則、外出は車で。運転手にも注意喚起を~

(1) 事前準備と乗車前点検

・ 郊外に外出するときは、明るい時間帯に出発し、日没までに帰宅できるプランを立てる。

・ ガソリンは、常に半分以上にしておく。

・ 車の周囲に不審な点がないかチェックする。

・ 車の内部(特に後部座席)に不審者や不審物がないかチェックする。

・ 付近に駐車中の車に人が乗っている場合、見張りや尾行のためではないか、気をつける。

(2) 運転手に対する指導

・ 駐車中は、原則、運転手を外に置き、周囲の状況をチェックさせる。

・ 運転手が見あたらないときは、車に乗り込まない。

・ 何か異変があるときのサインを決めておく。

・ 行き先、スケジュール等は運転手に事前に伝えることは避け、原則、乗ってから告げる。

(3) 乗車中の注意

・ ルートとスケジュールのルーティン化を避ける。

・ 全てのドアをロックし、窓は閉める。

   ・ 事故や負傷者を装うことがあるので、これを見て車両を止めない。当然、ヒッチハイカーは乗せない。

・ 回避行動のため、できる限り道路中央を走行する。また、交差点や信号では、およそ1台分のスペースをおいて停車する。

・ 常に後方を確認し、尾行に気づいたら止まらずに、最寄りの安全な場所(警察署、警備厳重なショッピングセンター等)に避難する。

・ 避難場所がない場合、クラクション等を鳴らし続け、人の注意を引く。

(4) 到着時の注意

・ 駐車場に不審者(車)がないことを確認した後に降車する。

・ ガレージに不審者が潜まぬよう、照明やロックを厳重にする。

  

3 部外者対応におけるポイント

~警備員を備えている場合、同人にも注意喚起を~

・ 郵便配達や物売り等、見知らぬ者は敷地内に入れず、警備員を備えている場合は同人に対応させるとともに、必ず氏名、連絡先、用件等を確認させる。また、敷地内をランダムにパトロールさせる。

・ 常に自宅周辺に不審な者がいないか、点検を怠らない。

・ 自宅直近に車両を駐車させない。

  

4 自宅の安全対策上のポイント

・ 昼夜を問わず、外に面する出入口(窓はもとより、玄関や裏口等)は、補助錠とともに常に施錠しておく。自宅内については、就寝中、必ず寝室を施錠する。

・ 警備員や使用人を容易に自宅内に入れない。また、それらの者が、夜間、自宅内への出入りを求めてきた場合は、容易に応ずることなく、携帯電話等で要件を聴取すること。

・ 料理人等、やむを得ず自宅内を出入りする者がいる場合は、居住スペースとの境界を鍵等の付いた扉で仕切る等、自宅内を自由に移動させない。



5 その他

・ 警備員及び使用人にも十分注意して監督する。使用人が泥棒を敷地内に招き入れたケースや、警備員が脅されて寝室の扉を開け、誘拐犯の侵入を容易にしたケースもある。

・ 携帯電話を常時携行し、家族、勤務先または大使館等の番号を予め携帯電話に番号登録しておく。

・ 襲撃の際には、必ず「兆候」がある。常に周辺に対する警戒を怠らず、家族や使用人に対し、何か日常と違う点があれば、速やかに報告させる。

(誘拐事件の兆候例)

○ 自宅周辺に不審な人物がいる、不審な車がとまっている。

○ 覚えのない郵便物や宅配便が届く。

○ 警備員や使用人とトラブルがあった、警備員や使用人の態度がおかしい。   

○ 電話に時々雑音が入る、無言電話が多い。

○ 付き合いの深くない人から、郊外への外出に誘われている。

○ 誰かに尾行さる、脅迫を受ける、金銭要求を受ける。

○ 不審な警察官に質問を受ける。





● テロ防止対策



1 テロの標的となりやすい場所(米国関連施設、米国系有名ホテルやファースト・フード店を含む欧米関連施設、政府機関・軍・警察等治安当局施設(含む車両、検問所等)、宗教関連施設)にはできる限り近づかない。外国人の多く集まる場所や外国人が多く利用する商業施設等の利用は短時間とし、長時間の滞在は極力控える。



2 デモや集会を見かけたら絶対に近づかず、その場から速やかに回避する。



3 マーケットやバス停など人が集まる場所での用事は、短時間で効率的に行なうとともに、常に周囲の状況に注意を払い、不審な状況を察知したら、速やかにその場から離れる。また、特に夜間の人が多く集まる時間帯は極力避けるよう心掛ける。

   

4 パキスタンで各種事業を行う場合には、安全上の情報収集・分析を常に怠らないことはもちろんのこと、その事業実施の必要性とリスクを比較の上、実施するとの結果に至った場合には、事務所及び活動現場の警備を強化する等十分な安全対策を講じる。



5 車両等にて長距離を移動される場合、幹線道路であってもできるだけ明るい時間帯を選び、日没後の移動は極力避ける。その際も、トラック・デポ(多数のトラックが駐車・待機している区画)付近への立ち寄りは避ける。また、郊外に赴く場合には、その地域の情報に十分注意を払い、必要な場合には、十分な警備体制をとる。



6 テロリストは身近なところに潜んでいる。目立つ行動や騒がしい行為は極力控える。