1.9月14日、パンジャブ州アトック在住の35歳女性が、高熱と持続する鼻・気道出血などのため、ラワルピンディ市内のHOLY FAMILY H0SPITAL(HFH)へ入院、16日にイスラマバード市内のSHIFA INTERNATINAL HOSPITAL(SIH)に移送されました。検査の結果、患者は「クリミア・コンゴ出血熱」に感染していることが判明しました。
また、30日付報道によれば、HFHにて患者の治療に当たった医師及び看護師が、無症状ながら血液検査の結果、同出血熱ウイルスに感染していることが判明した旨報じています。
2.クリミア・コンゴ出血熱は、ウイルス性の出血熱で、自然界ではウシ、ヒツジ、ヤギなどで感染サイクルが形成されており、マダニがこれらを刺すことにより伝搬していきます。これらの動物では感染しても症状はでませんが、ウイルスを持ったマダニにヒトが刺された場合、2~9日間の潜伏期間ののち、突然の高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐がみられ、重症化すると全身の出血(鼻出血、気道出血、口腔出血、消化管出血、皮下出血など)をきたすことがあります。
ただし、ウイルスに感染しても発症率は20%程度と推定されており、さらに死亡率は15~40%(より高いとする報道もあります)とされています。
感染経路は以下のとおりです。
(1) ウイルスを持ったマダニに刺されたりこれをつぶしたりする。
(2) 感染した動物の血液や組織と接触して感染する。
(3) 感染者の血液や血液を混ずる体液や排泄物に接触する。
つまり、流行地の羊飼い、野営者、農業従事者、獣医師等、家畜およびダニと接触する人や、医療従事者が感染リスクが高いと考えられます。パキスタンでは、過去にも感染患者を担当した医師が感染し死亡した事例があります。生きた家畜と接触したり、牧場に行ったり、病院で感染患者に濃厚に接触しない限り、感染のリスクはほとんどないと言えます(空気感染は否定されています)。
今回の最初の感染患者も牧畜を営んでいたとのことであり、現在、この患者はSIHの集中治療室で厳重に隔離され、快方に向かっています。
3.クリミア・コンゴ出血熱は、南アジア、中央アジア、中近東、アフリカに広く分布しており、パキスタンでは1976年以来、約300例が報告されています。パキスタン国内では、毎年、FATA、KP州、シンド州などで報告が確認されており、2000年以降は報告数が急増しているとされています。
4.つきましては、在留邦人の皆様におかれましては、都市部での日常生活では感染リスクはほとんどないと考えられますが、念のため、以下の諸点につき十分注意してください。
なお、万が一、上記2.のような症状があり、感染が疑われるような場合には、お早めに信頼のおける医療機関、もしくは当館医務官等にご相談いただくようお願いいたします。
(1)家畜や牧畜業者との接触、農場や牧場でのキャンプやピクニックを避ける。
(2)鼻血が止まらないなど、出血傾向と考えられる症状のある人には近づかない。
(3)医療機関へ行く場合には、なるべく他の患者や入院病棟、血液の付着している可能性のある廃棄物などには近づかない。
(4)野生動物にはむやみに手を出さない。